自動化すべきでないとき(そして待つのが正しいとき)
著者: DBR77 Team · 公開日 · 更新日


まだ安定していない工程は自動化しないでください。シフトごとにやり方が変わる、スクラップや手直しが多い、部品が予測できない状態で届く、現在のサイクルタイムが本当はどれくらいなのか誰にも言えない、といった工程です。また、投資回収期間のうちに製品や生産量が変わる場合、レイアウトの改善やアシスト機器のような単純な対策で問題が解決する場合、プロジェクトの責任者がいない場合も、見送るべきです。そうした状況では、ロボットセルは今日の問題を高価なハードウェアに固定してしまいます。待つことが正しい判断になるのは、それが能動的な判断であるときです。つまり、直すべきことのリスト、責任者、そして再判断の期日が文書になっているときです。
自動化が弱い工程をさらに悪くする理由
手作業の工程は、多くのばらつきを隠しています。経験のある作業者は、逆向きに届いた部品を回し、混ざった箱を仕分け、バリを拭き取って作業を続けます。誰もそれを記録していません。ロボットは、誰かがそう設計しない限り、それができません。部品が同じ向き、同じ場所、既知の公差の範囲で供給される必要があります。
だからこそ、NISTの製造業拡張パートナーシップ(MEP)はAutomation 101ガイドで、自動化を検討する前に工程を可視化してムダを取り除くよう勧め、工程が合理化されていなければ「自動化はそうした非効率を増幅させるだけになりかねない」と警告しています。
想定例:ある工場が、射出成形機から部品を取り出して箱に入れるロボットを導入したいと考えています。サプライヤーの現場訪問で、金型が2個取りでわずかに異なる部品ができること、ショートショットは手作業で選別していること、顧客によって箱の種類が変わることがわかります。これらは依頼内容のどこにも書かれていません。サプライヤーは、はるかに複雑なセルを見積もるか、1シフトに何度も止まる単純なセルを見積もるかのどちらかです。金型を直し、箱の規格を1つに統一していれば、課題もセルも小さくなっていたはずです。


工程の改善を先にすべき7つのサイン
| サイン | 現場で見えること | 先にやるべきこと |
|---|---|---|
| 1. やり方がばらばら | シフトや作業者ごとに作業のやり方が違う | 標準作業を文書化し、それに沿って教育する |
| 2. 基準値がない | サイクルタイム、シフトあたりの生産量、停止時間を自信を持って言える人がいない | 見積りを依頼する前に数週間測定する |
| 3. スクラップや手直しが多い | 工程で部品の選別、手直し、不良判定が行われている | 前工程で原因を取り除く |
| 4. 投入がばらばら | 部品が混在している、向きがばらばら、容器が変わる | 荷姿と部品の供給方法を標準化する |
| 5. 製品や生産量が変わる予定 | 設計変更、生産終了、新規顧客が控えている | 新しい製品と生産量が確定するまで待つ |
| 6. レイアウトが変わる予定 | ラインの移設、増設、新棟が計画されている | まずレイアウトを決める |
| 7. 誰も責任を持っていない | 「製造部門が主導すべきだ」「技術部門が主導すべきだ」 | 責任者を1人決め、承認者を明確にする |
サインが1つだけなら、たいていはプロジェクトの中で解決できることです。同じ工程で3つ以上当てはまるなら、プロジェクトは推測に基づいて見積もられ、その推測は後で仕様変更として戻ってきます。
中でも重要なのが基準値です。基準値がなければ、目標サイクルタイムを書けず、提案を評価できず、受入検査で結果を証明することもできません。工程にコントローラ付きの設備があるなら、数週間分の設備データのほうが、ストップウォッチによる時間測定よりも良い基準値になることがよくあります。データの集め方は既存工場(ブラウンフィールド)でのIoT導入、最初の30日を参考にしてください。
もっと単純な対策で済む場合
「ロボットが必要だ」から始まった課題の中には、ロボットなしのほうがうまく、早く解決するものもあります。
レイアウトと物の流れ。 作業者が材料を取りに長い距離を歩いている、あるいは台車が通路をふさいでいるなら、解決策は新しいレイアウト、ライン横のストア(スーパーマーケット)、決まった補充ルートかもしれません。
標準作業と治具。 品質が部品の位置合わせの丁寧さに左右されるなら、簡単な治具やポカヨケで、画像処理付きロボットのごく一部のコストで問題をなくせることがあります。
人間工学的な補助具。 主な理由が身体的負担であれば、アシスト機器、真空リフター、高さ調整式の作業台、パレットターンテーブルを検討してください。OSHAは、作業関連の筋骨格系障害が休業や就業制限の原因として最も多く報告されているものの1つであり、それを減らしたりなくしたりする方法は数多くあると指摘しています。自動化はその1つにすぎません。
単純な対策は、最初のステップにもなります。今は工程を安定させ、数か月測定し、もっと明確なブリーフを持って後で自動化するのです。
工程は安定し、測定できていますか?
それなら、DBR77 MarketplaceでTechnology Challenge(技術課題)を出す準備ができています。一度記述するだけで、インテグレーターの提案を統一形式で比較できます。製造業の企業は無料でご利用いただけます。
タイミングが合わない場合
安定した工程でも、製品、生産量、建屋のいずれかが近く変わるなら、自動化の候補としては不向きです。
セルは製品を前提に設計されます。寸法、重量、荷姿、品種です。今後1年以内に設計変更や新しい荷姿が計画されているなら、その変更後もセルのどれだけが使えるかをサプライヤーに聞いてください。答えが「ほとんど使えない」なら、待つか、新しい製品に合わせて設計してください。
更新されないかもしれない契約に合わせて設計したセルはリスクなので、投資回収期間と、生産量が維持されると自信を持てる期間を比べてください。また、ラインが別の棟に移る、あるいは新棟が計画されているなら、古いレイアウトを自動化すると二重に費用を払うことになりがちです。
想定例:ある工場が、9か月後に新しいカートンサイズへ切り替わる製品群について、ライン末端の梱包の自動化を計画しています。チームはサプライヤーに、新しいカートンを前提に見積もり、切り替え後に据え付けるよう依頼します。発注は今行い、後から作り直す必要はありません。
ずるずると先延ばしにせずに待つ方法
リストも責任者もない「来年また検討しよう」は、たいていその話題が四半期ごとに戻ってきて、その間に何も変わらないことを意味します。見送りは次の4点で文書にしてください。
- 理由:上のサインのどれに当てはまるかを、1文か2文で書きます。
- 再開の条件:たとえば、全シフトで標準作業が定着している、スクラップが合意した水準を下回っている、8週間分の基準データがある、新しいカートンサイズが確定している。
- リストを片づける責任を持つ1人。
- 状況にかかわらず、工場が再判断する期日。
その間、待つことに値段をつけてください。製造業における手作業工程の隠れたコストで示した手作業工程の月額コストを示せば、経営陣は先送りにいくらかかっているかがわかり、再開の期日が形だけのものになりません。
リストの項目がすべて片づいてもプロジェクトが始まらないなら、産業オートメーションに関する7つの誤解にある思い込みの中に原因を探してください。条件が満たされたら、最初に自動化する工程の選び方を使って対象の工程を選びます。
DBR77 Marketplaceの役割
再開の条件がそろったら、次はDBR77 MarketplaceでのTechnology Challengeです。ガイド付きフォームはプロジェクトの成熟度の選択から始まり、それによって必須項目が決まります。続いて要件、予算、運用上の前提条件を入力するので、埋められないステップがあれば、それが公開前に埋めるべきギャップです。課題は公開前にDBR77の専門家が確認します。
よくある質問
不安定な工程を自動化するのが正しい場合はありますか?
あります。自動化が不安定さの原因そのものを取り除く場合です。たとえば、手作業のハンドリングが部品を傷つけている場合です。その際は、ブリーフでばらつきを包み隠さず記述し、サプライヤーが立ち上げ時に初めて気づくのではなく、それを前提に設計できるようにしてください。
見積りを依頼する前に、どれくらいの期間測定すべきですか?
通常のばらつきをカバーできる期間です。全シフト、主な品種、そして少なくとも1つの段取り替えのパターンを含めます。多くの工程では数週間になります。設備データがあれば活用してください。
待つことは経営陣に誤ったメッセージを送りませんか?
理由、再開の条件リスト、責任者、期日をそろえて見送りを文書にすれば、そうはなりません。信頼を失うのは、あいまいな「まだ早い」です。
まとめ
見積りを依頼する前に、対象の工程を7つのサインで確認してください。3つ以上当てはまるなら、工程の改善をプロジェクトの第1フェーズとして扱い、なぜ待つのか、何を変える必要があるのか、誰が責任を持つのか、いつ再判断するのかを書き残します。1つだけなら、プロジェクトの中で解決することにして、サプライヤー向けに工程の記述を始めてください。
工程の準備が整ったら、いつでも
工程の準備ができたらDBR77 MarketplaceにTechnology Challengeを投稿するか、まず何を準備すべきかについてチームにご相談ください。
出典
- NIST Manufacturing Extension Partnership, Automation 101: How to Plan for a Successful Implementation, 2024年
- Occupational Safety and Health Administration (OSHA), Ergonomics, 2026年閲覧