契約から稼働開始までのリスクを減らす方法
著者: DBR77 Team · 公開日 · 更新日


立ち上げ時の想定外の事態の多くは、何か月も前から見えていたものです。契約から稼働開始までの間にリスクが大きくなるのは、前提条件が再確認されないとき、変更が決定されないまま積み重なるとき、工場自身のタスクが遅れるとき、そして新しい設備を動かす最初の数週間に向けて誰もシフトの準備をしないときです。リスクは3つの習慣で減らせます。マイルストーンごとに見直す短いリスク一覧、各フェーズの前に設けて合格しなければ先に進めないゲート、そして据付と並行して進める生産準備計画です。期日と担当者、そしてチェックが不合格なら立ち止まる規律があれば、小さなチームでも実行できます。
契約締結後にリスクが大きくなる理由
署名の時点では、誰もが難しい部分は終わったと感じます。サプライヤーは決まり、価格は固定され、スケジュールも合意されました。しかし、プロジェクトの前提条件の多くはまだ検証されていません。製品データ、前工程の速度、ネットワークへのアクセス、据付期間、セルを動かす人員などです。
納入の過程で、これらの前提条件は1つずつ現実と突き合わされます。ほとんどは成り立ちます。成り立たないものもあり、遅く崩れるほどコストは大きくなります。製品寸法の誤りが設計レビューで見つかれば、図面の変更で済みます。現地受入試験で見つかれば、新しいグリッパー、1週間のロス、そして誰が費用を負担するかをめぐる緊迫した会議が待っています。
契約から稼働開始までの間にやるべきことは、成り立たない前提条件を、まだ安く直せるうちにできるだけ早く見つけることです。


各フェーズのリスクの所在
各フェーズには、それぞれ典型的なリスクと、終わりに自然なゲートがあります。次に進む前に、ゲートで確認しましょう。
| フェーズ | 典型的なリスク | 次に進む前の確認 |
|---|---|---|
| 設計 | 誤った、または不完全な製品データ、レイアウトの干渉、不明確なインターフェース、安全コンセプトの未合意 | 技術、保全、安全が署名した設計レビュー。インターフェース一覧の確定 |
| 製作とFAT | 製作中の変更、試験されていない品番、未完成のソフトウェア | 基準に対してFAT合格。担当者と期日付きの指摘事項リスト。ソフトウェアのバージョンを記録 |
| 輸送と据付 | 床、ユーティリティ、ネットワークの準備不足。据付期間と生産の重複。協力会社の安全 | 工場の準備チェックリストの完了。作業許可とロックアウトの手順の整備 |
| 試運転とSAT | 実システムとのインターフェースの不具合、調整の長期化、時間に追われての試験の省略 | 機能SATの署名。安全機能の検証。未解決のクラスA項目なし |
| 立ち上げ | 目標を下回る生産量、自信のないオペレーター、保全の準備不足、バックアップ計画の欠如 | 性能確認運転の合格。全シフトで教育を受けた要員。スペアパーツの現地在庫 |
FATとSATの基準そのものは、自動化の受入基準、FAT、SATの決め方を参考に決めてください。引き継ぎパッケージと工場の準備計画はサプライヤー選定から実行へ:抜け漏れのない引き継ぎで解説しています。
想定外を減らす第一歩は、明確なチャレンジから
提案を依頼する前に、DBR77 Marketplaceでサイクルタイム、製品データ、現地の条件を記述しましょう。後で検証すべき前提条件が少なくなります。
リスクレビューの進め方
リスク一覧は短く保ちます。セル1つや小規模なラインなら、10から20項目で十分です。項目ごとに、何がうまくいかない可能性があるのか、その可能性と深刻度、担当者、実施中の対策とその期日を書きます。インテグレーターと一緒に、すべてのゲートで、そして少なくとも月に1回見直しましょう。
各レビューでは、次の5つの問いに答えます。
- 合意したものを今も作っているか。それとも範囲がずれているか。
- 前回のレビュー以降、どの前提条件が検証され、どれがまだ未確認か。
- 受入基準はまだ達成可能か。
- 工場自身のタスクは予定どおり進んでいるか。
- どんな新しいリスクが出てきたか。
すべてのレビューは決定で締めくくります。リスクを受け入れるか、対策を講じるか、スポンサーにエスカレーションするかです。担当者と期日とともに書き残しましょう。
インテグレーターには、進捗報告に加えて、自社で把握しているリスクもレビューに持ち込んでもらいましょう。サプライヤーはリスク(部品の遅れ、不明確な信号一覧など)に早く気づくことが多いものの、問題になるまで口に出さないことがよくあります。開かれたレビューは、それを話す場になります。
ずれの警告サイン
スケジュールに表れる前に、プロジェクトがずれ始めていることを示すサインがあります。
- 変更依頼が1つの領域に集中する。同じインターフェースや製品群に複数の変更が出るのは、たいてい要件があいまいだからです。
- 工場のタスクが静かに遅れる。ネットワークポート、床面の表示、サンプル部品。1つひとつは小さくても、合わせると据付日がずれます。
- 「時間節約のため」に試験が短縮される。省略されたFATの試験は現地に持ち越され、そこでより高いコストがかかります。
- 担当者が会議に来なくなる。保全やITが週次の会議から姿を消すと、その質問は立ち上げ時に再び現れます。
- インテグレーターのチームが入れ替わる。新しいプロジェクトマネージャーやリードエンジニアには、改めて完全な引き継ぎが必要です。
これらのサインが2つ以上同時に見えたら、臨時のレビューを開きましょう。1週間立ち止まって計画を立て直すほうが、試運転中に抜けを発見するよりも安く済みます。そのための契約上の手段は、変更指示の手続き、マイルストーン、ペナルティです。それぞれに何を盛り込むべきかは自動化の契約に署名する前に確認すべきことで確認してください。
据付と試運転の間の安全
ロボットセルの場合、安全上のリスクの多くは通常の生産以外の場面にあります。OSHA Technical Manualは、スウェーデンと日本の調査で、ロボットによる事故の多くは通常の運転状態では発生しておらず、組立、据付と試験、初期のプログラミング、保全の際に発生していることがわかったと述べています。同じ章では、各ロボットアプリケーションについて試運転前にリスクアセスメントを文書化すべきこと、そして初回の起動前に現地受入を実施すべきことも示されています。
実務では、次の点を計画しておきましょう。
- 完成したセルに加えて、据付と試運転の期間もリスクアセスメントの対象にする。
- 稼働中の工場での協力会社の作業について、明確なルールを設ける。入構教育、作業許可、区画の表示です。
- 最初に通電した日から、新しい設備のロックアウト手順を運用する。米国では、危険なエネルギーの管理はOSHA 29 CFR 1910.147で規定されています。
- 「今夜だけ」安全機能をバイパスして生産することはしない。
生産準備:新しいセルを動かせるシフトを整える
セルが試験に合格しても、工場がそれを動かす準備ができていなければ、最初の1か月で行き詰まることがあります。この準備は、セルの製作中に始めましょう。
- 人員。 シフトごとにオペレーターと保全技術者を指名します。SATの前に実際のセルで教育を計画し、その後で習熟度を確認します。
- 標準作業。 起動、段取り替え、詰まりの解除、故障後の再起動について、簡潔な手順書を作ります。
- 保全。 予防保全の計画、現地に置く重要なスペアパーツ、シフトごとのサポート窓口を決めます。
- 切り替え計画。 旧工程をいつ止めるかを決めます。最初の数週間に備えて、完成品の在庫を積み増すか、手作業に戻せる体制を残しておきます。
- 立ち上げの目標。 初日からフル生産を期待するのではなく、最初の数週間の現実的な立ち上がり曲線を合意します。
立ち上げはデータで測ります。初日から記録した生産量、停止とその原因によって、セルが改善しているかどうか、どこに手を打つべきかがわかります。既存設備がまだ接続されていなければ、ブラウンフィールド工場におけるIoT導入の最初の30日間から始めてください。
DBR77 Marketplaceの活用
契約後のリスクの多くは、あいまいな要件や、異なる前提条件に基づく提案によって、契約前に生み出されています。DBR77 Marketplaceでは、Technology Challenge(技術課題の公募)のフォームで要件と運用上の前提条件を入力し、公開前にDBR77の専門家が内容を確認します。詳細が足りないインテグレーターはQ&Aタブで質問するため、すべての応募者が同じ回答をもとに提案を作ります。
よくある質問
リスク一覧は工場とインテグレーターのどちらが管理すべきですか?
双方がそれぞれの一覧を持ちますが、工場側の責任者がプロジェクト全体の統合した一覧を1つ管理すべきです。インテグレーターは技術的な納入のリスクを担います。工場は自らのタスク、人員、生産計画を担います。
リスクはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
すべてのゲート(設計レビュー、FAT、据付前、SAT、立ち上げ完了)で、その間も少なくとも月に1回見直します。短いプロジェクトなら、上位5つのリスクを毎週10分確認すれば十分です。
ゲートのチェックが不合格だった場合は?
次のフェーズに進んではいけません。担当者と期日を決めて対策に合意し、再度確認します。不合格のまま先に進んでも、問題をより高くつく場所へ移すだけです。根本的な問題であれば、範囲を絞った最初のフェーズから始めるほうが良かったのかもしれません。その進め方は大型発注の前に:自動化のパイロットと有償検討フェーズの進め方で確認できます。
まとめ
まずリスク一覧を作りましょう。10から20項目に担当者と期日を付け、次のゲートでインテグレーターと見直します。生産準備計画はセルの製作中に始め、SATの前にオペレーターと保全担当者が実際のセルで教育を受けられるようにします。
不明点を減らして次のプロジェクトを始める
インテグレーターが必要とする事実を添えてTechnology Challengeを掲載するか、仕組みについて当社チームにお問い合わせください。