計画10 分で読める

経営陣が承認する自動化ビジネスケースの作り方

著者: DBR77 Team · 公開日 · 更新日

ドライバーを隠した資料は却下されるドライバーを隠した資料は却下される

経営陣が自動化プロジェクトを承認するのは、ビジネスケースが数ページで5つの問いに答えているときです。なぜ今このプロジェクトが必要なのか。どの選択肢を比較し、なぜこれを選んだのか。どのように調達するのか。ライフサイクル全体で見て会社が負担できるのか。そして誰が実行し、成功をどう測るのか。却下や先送りの原因の多くは、資料の穴です。前提が見えないROIの数字がひとつだけ、代替案がない、リスクが書かれていない、工場側の作業が「別途決定」のまま、といった状態です。5つの問いを軸にケースを組み立て、リターンを生む要因(ドライバー)を示し、リスクと責任者を同じページに載せ、詳細は付録に回しましょう。

経営陣が自動化プロジェクトを却下・先送りする理由

経営陣が目にする自動化の申請は、以前より増えています。McKinseyが2022年に産業企業を対象に行った調査では、今後5年間で多くの企業にとって自動化システムが設備投資の25%を占めると著者らが指摘しています。申請が大きく、頻繁になるほど、問いは厳しくなります。

「ノー」や「来四半期に出直してほしい」となる典型的な理由は次のとおりです。

  • ROIの数字がひとつだけでドライバーがなく、リターンが実現するには何が成り立つ必要があるのか、経営陣には見えない。
  • 1社のサプライヤーのコンセプトしか示されず、ソリューションの規模が適切かどうか判断できない。
  • リスクが書かれていないか脚注に埋もれていて、最初の厳しい質問ひとつでケース全体が弱く見えてしまう。
  • 責任者も工場側の計画もなく、誰がプロジェクトを動かし、工場自身が何を用意するのかが決まっていない。
  • 「立ち上げ成功」のように、誰も測定できないあいまいな成功の定義になっている。

5つとも問題があるのはプロジェクトそのものではなく資料なので、会議の前に埋められます。

自動化ビジネスケースの6枚のカード:戦略(なぜ今か)、経済(「何もしない」を含めて最善の選択肢か)、商務(どう購入するか)、財務(負担できるか)、管理(誰が実行するか)、そして3つのシナリオ、損益分岐点、責任者つきの主要リスクとして示すリスク。自動化ビジネスケースの6枚のカード:戦略(なぜ今か)、経済(「何もしない」を含めて最善の選択肢か)、商務(どう購入するか)、財務(負担できるか)、管理(誰が実行するか)、そして3つのシナリオ、損益分岐点、責任者つきの主要リスクとして示すリスク。

自動化ビジネスケースが答えるべき5つの問い

参考になる構成は公共投資の分野にあります。HM TreasuryのGuidance on Developing Business Casesは「Five Case Model」を採用しています。戦略ケースは提案がなぜ必要かを示し、経済ケースは複数の選択肢のコスト、便益、リスクを評価し、商務ケースはどのように調達するかを説明し、財務ケースは負担可能性を扱い、管理ケースは実行のための具体的な体制を定めます。この考え方は工場にもそのまま当てはまります。

ケース経営陣の問い示すべき内容根拠
戦略なぜこれを、なぜ今?工場の言葉で表した課題、待つことのコスト、工場目標とのつながりベースラインデータ、手作業工程の月間コスト
経済これが最善の選択肢か?「何もしない」と小さな一歩を含む2つか3つの選択肢と、それぞれのコスト、便益、リスク提案書、選択肢ごとのTCO、シミュレーションやテストの結果
商務どう購入するか?サプライヤーの探し方と比較方法、選んだ提案、主要な契約条件比較表、提案書、契約書案
財務負担できるか?四半期ごとの資金の動き、支払マイルストーン、回収期間、予算への影響財務モデル、マイルストーン計画
管理誰が実行し、うまくいったことをどう確認するか?責任者、工場側のタスク、受入基準、立ち上げ後の最初のKPIプロジェクト計画、受入基準の概要、KPIリスト

多くの資料で手薄なのが経済ケースです。「何もしない」は常に選択肢のひとつであり、そのコストは手作業工程のフルコストです。計算方法は製造業における手作業工程の隠れたコストを参照してください。商務ケースは提案の公平な比較の上に成り立ち、その比較は自動化の提案を横並びで比較する方法の手順で作れます。

リターンを動かす要因を示す

回収期間やNPVはケースを要約した数字であり、経営陣はその数字を動かしている要因を尋ねてきます。便益とコストを項目ごとに分けて並べましょう。作業時間、残業、スクラップ、労災、追加の生産能力、保全、エネルギー、ソフトウェア、サービスです。各項目について、出所と根拠の種類を示します。

  • 実測値: 自社ラインのデータ。シフトあたりの生産量やスクラップ率など。
  • 実績値: 昨年の残業、派遣会社の請求書、労災のコスト。
  • サプライヤーの確約: サプライヤーが受入時にテストするサイクルタイムや稼働率。
  • 推定値: 判断に基づく数字。推定であることを明記し、誰が出した数字かを記載します。

見積額の代わりに、自動化の本当のコスト:見積額だけではないTCOのコスト項目を使ったライフサイクル全体のコストを使います。資金の動きは四半期ごとに示しましょう。発注時の前払金、FAT時の支払い、SAT後の保留金は、一括払いとは予算への影響が異なるからです。

経営陣には実際の提案を示しましょう

プロジェクトをDBR77 MarketplaceにTechnology Challenge(技術課題の公募)として掲載し、承認を求める前に統一フォーマットで提案を比較しましょう。製造業者は無料で利用できます。

Technology Challengeを掲載する

リスクと感度分析を同じページに載せる

経営陣は、どこで失敗しうるかを示したケースを信頼します。

  1. 3つのシナリオ:想定、慎重、ストレスの3つです。影響の大きいドライバーを変えて計算します。達成できる生産量、立ち上げ期間、保全コスト、製品の数量などです。
  2. 損益分岐点:生産量や数量がどこまで下がると、目標期間内に投資を回収できなくなるのか。答えが「初日から定格速度で動いた場合のみ」なら、経営陣はそれを知っておくべきです。
  3. 責任者つきの主要リスク:最大5つまでとし、それぞれに対策と担当者の名前を付けます。典型的なのは、既存のPLCやMESとの統合、納入期間中の製品変更、主要部品のリードタイム、オペレーターの受け入れ、計画より長引く立ち上げです。

説明のための例:自動搬送ルートのビジネスケースで、想定シナリオの回収期間は3年、数量が5分の1減るストレスシナリオでは5年と示されています。経営陣は、コストのかからない条件を1つ付けて承認します。稼働開始から6か月後に、実際の生産データでレビューを行うという条件です。

意思決定資料に入れるべき内容

役員が付録を開かなくても、何を決めるのかを理解できるようにします。

本編(この順番で):

  1. 1ページの要約:求める決定、金額、スケジュール、期待される成果、上位3つのリスク。
  2. 課題とベースライン、ひと月待つごとのコスト。
  3. 比較した選択肢と、選んだ案が選ばれた理由。
  4. 選んだ提案:範囲、除外事項、サプライヤー、主要条件。
  5. 財務:TCO、四半期ごとの資金の動き、回収期間、シナリオ。
  6. 実行:責任者、工場側のタスク、マイルストーン、受入基準、最初の数か月のKPI。
  7. 求める決定と、付帯する条件やゲート。

付録: 比較表の全体、前提条件の一覧、提案書、レイアウト図、シミュレーションやテストの結果、会議メモ。資料にはバージョン番号を付け、1か月後に経営陣がこの議題に戻ったときに、どのバージョンが承認されたのか全員がわかるようにします。

不確実性がまだ高い場合は、段階的な決定を求めます。まず有償のコンセプトフェーズやパイロットを承認してもらい、合意した成果が出た後に本投資を承認してもらう形です。最初の段階の組み立て方は大型発注の前に:自動化のパイロットと有償検討フェーズの進め方を参考にしてください。

経営会議の枠を押さえる前の準備度チェック

議題に時間を確保してもらう前に、スポンサーがスライドを開かずに次の問いに答えられるか確認しましょう。

  • 何の課題を解決するのか。それは現在、月にいくらのコストを生んでいるか。
  • 何もしないことも含め、ほかに何を検討したか。
  • サプライヤーをどう比較し、なぜこの会社なのか。
  • 工場自身は何を用意する必要があり、誰が責任を持つのか。
  • 受入で何を、どんな数字で証明するのか。
  • 現実的に考えうる最悪のケースは何か。そのとき何をするのか。
  • 立ち上げ後に最初に何を確認し、いつ報告するのか。

どれかひとつでも答えるのに別の会議が必要なら、資料はまだ準備できていません。自分の申請を2週間遅らせるほうが、経営陣に1四半期先送りされるよりもコストは小さくて済みます。

DBR77 Marketplaceの活用

DBR77 Marketplaceでは、インテグレーターがまずソリューション(コンセプト)を提出し、その後に範囲、条件、コストを含む提案を標準フォーマットで提出するため、経済ケースと商務ケースを、経営陣が検証できる複数の実際の選択肢に基づいて作れます。製造業者は各ソリューションと提案を採用または不採用とし、その記録が選定の経緯として残ります。ケースが新しいレイアウトやマテリアルフローに依存する場合は、DBR77 DTでのシミュレーションが経済ケースの根拠になります。その部分はデジタルツインのビジネスケースの作り方に沿って準備できます。

よくある質問

自動化の意思決定資料はどのくらいの長さにすべきですか?

1ページの要約と数ページの本編、それに付録です。本編がそれ以上必要になるなら、判断の内容がまだ十分に明確になっていません。

経営陣はどのくらいの回収期間なら承認しますか?

一般的なルールはありません。自社のハードルレートと戦略によって決まります。ケースを作る前に、目標とする回収期間や必要なリターンを財務部門に確認し、3つのシナリオすべてでプロジェクトがその基準に対してどうなるかを示しましょう。

経営会議の前にサプライヤーの提案を受け取っておくべきですか?

最終的な投資判断のためには、受け取っておくべきです。実際の提案があることで、経済ケースと商務ケースに説得力が生まれます。提案を依頼する前に予算が必要な場合は、まず予算の幅について承認を求め、最終的な判断は提案を手元にそろえてから諮りましょう。

まとめ

経営会議の枠を押さえる前に、スポンサーと準備度チェックを行い、見つかった穴をすべて埋めてください。そのうえで、5つの問いに沿って作り、実際の提案、3つのシナリオ、リスクの責任者を載せた本編を送り、明確な条件付きの決定を求めましょう。不確実性がまだ高い場合は、段階的な決定を求めます。

比較できる提案をもとにビジネスケースを作る

DBR77 MarketplaceにTechnology Challengeを掲載するか、経営陣向けの比較資料の準備方法について当社チームにご相談ください。

Technology Challengeを掲載する · Marketplaceチームに問い合わせる

出典