価格だけでなく自動化の商取引モデルを比較する方法
著者: DBR77 Team · 公開日 · 更新日


合計額が同じ2つの自動化の提案でも、取引の中身は大きく異なることがあります。違いは商取引モデルにあります。いつ、どんな根拠に対して支払うのか。価格に、御社の工場に据え付けるまでの何が含まれるのか。保証はいつ始まるのか。保証終了後のサービスにいくらかかるのか。購入するのか、リースか、従量課金か。これらはいずれも、資金とリスクを御社とサプライヤーの間で移動させます。商取引モデルを比較するには、これらの要素を価格の横に1つの表としてまとめ、要素ごとに「立ち上げが遅れたとき、お金を握っているのは誰か、リスクを負うのは誰か」を問いましょう。
合計は同じでも、取引は違う
説明のための例:ある工場が、ロボットによるパレタイジングセルについて2つの提案を受け取ります。数字は手法を示すための架空のものです。
- 提案A: $480,000。発注時に50%、納入時に40%、SAT後に10%。保証は出荷から12か月。
- 提案B: $500,000。前払金保証と引き換えに発注時に30%、FAT後に30%、SAT後に30%、安定生産60日後に10%。保証はSATから24か月。
セルが工場に到着した時点で、サプライヤーAは$432,000、サプライヤーBは$300,000を受け取っています。立ち上げが思うように進まない場合、サプライヤーBにはまだ$200,000が御社の工場での成果を待つ形で残っています。サプライヤーAの場合は$48,000です。しかもAの保証は、トラックが工場を出た時点から進んでいます。据付と立ち上げに3か月かかれば、最初のパレットを出荷する前に保証期間の4分の1が過ぎてしまいます。
提案Aは$20,000安くなっています。提案Bでは、購入者がお金をよりコントロールでき、保証も長く、しかもSATから始まります。


価格の横に並べるべき商取引上の要素
すべてのサプライヤーに同じ要素を求め、回答がない項目は御社に有利だと決めつけず、未解決の質問として扱います。
| 要素 | 各サプライヤーに確認すること | 重要な理由 |
|---|---|---|
| 支払スケジュール | マイルストーンごとの割合と、各支払いのきっかけとなる事象 | 問題が起きたとき、誰がお金を握っているかが決まる |
| 保全措置 | 前払金保証、保留金、履行保証 | 納入前に支払った資金を守る |
| 引渡条件 | インコタームズ、荷下ろし、据付のための搬入作業、据付、出張費、現地での監督 | ある価格はサプライヤーの出荷場で終わり、別の価格は御社の工場内まで含む |
| 価格の有効期間 | 有効期間、通貨、ロボットや部品の価格改定 | 予算が承認される前に提案内容が変わりうる |
| 保証 | 開始時点(出荷、SAT、生産開始)、期間、部品、作業費、出張費 | 生産開始前に保証期間が終わってしまうことがある |
| サービスとスペアパーツ | 対応時間、リモートサポート、価格付きスペアパーツリスト、保証後のサービス価格 | 2年目から10年目の停止コストが決まる |
| 変更 | 日当単価と変更の価格の決め方 | 変更はつきものであり、その価格も取引の一部 |
| ファイナンス | 購入、リース、従量課金、最低契約期間、満了時の選択肢 | キャッシュフロー、貸借対照表、所有権が変わる |
この表は、セルの耐用期間全体のエネルギー、保全の工数、スペアパーツを加えるライフサイクルコスト計算の入力になります。計算の組み立て方は自動化の本当のコスト:見積額だけではないTCOを参考にしてください。技術的な範囲は、自動化の提案を横並びで比較する方法の手法で別に比較します。
支払マイルストーン:根拠に対して支払う
支払いは、カレンダー上の日付ではなく、試験の合格など誰かが確認できる事象に結び付けます。ロボットセルやラインの典型的なマイルストーンは次のとおりです。
- 発注または設計承認:設計とロボットなどの長納期部品をまかなう前払金です。割合が大きい場合は前払金保証を求めましょう。
- FAT合格:サプライヤーの工場で、御社の製品を使い、合意した基準に対してセルが稼働すること。
- 現地への納入:設備が御社の工場に届き、梱包明細どおりにそろっていること。
- SAT合格:御社の工場でラインに接続し、合意した処理能力でセルが稼働すること。
- 最終受入:決められた生産期間を大きな故障なく稼働すること。多くの場合、少額の保留金が最後に支払われます。
価格のうち2、4、5のステップの後に置く割合が大きいほど、サプライヤーの資金はセルが動くかどうかに左右されます。ただし行き過ぎると、優れたサプライヤーは価格を上げるか、辞退します。御社のプロジェクトを資金面で肩代わりすることになるからです。FATとSATの基準に入れるべき内容は、自動化の受入基準、FAT、SATの決め方にまとめています。
支払条件と取引条件を横並びで確認する
DBR77 Marketplaceでは、範囲、条件、コストを含む提案が1つの標準フォーマットで届くため、財務部門は合計額以外も比較できます。製造業者は無料で利用できます。
引渡条件と価格の有効期間
「価格に配送を含む」には、さまざまな意味がありえます。ICCのIncoterms 2020は、売り手から買い手への物品の引渡しに伴う作業、費用、リスクを定めた、アルファベット3文字からなる11の貿易条件です。Ex Works(工場渡し)とDelivered at Place(仕向地持込渡し)では、引渡しの地点がまったく異なります。各サプライヤーに、適用するインコタームズを明記してもらいましょう。
インコタームズは、物品の到着後に起きることはカバーしません。荷下ろしと据付のための搬入作業、据付、立ち上げチームの出張費、現地サポートが何日含まれるかは、別途確認します。立ち上げの日数を日当で請求する安い提案は、固定価格の提案より高くつくことがあります。
価格の有効期間も確認しましょう。予算の承認には何か月もかかります。提案の有効期間が30日で、為替レートや価格改定条項に連動しているなら、承認された金額と発注時の金額が一致しないかもしれません。
保証、サービス、スペアパーツ
保証期間は、その開始時点がわからなければほとんど意味がありません。出荷から12か月とSATから12か月は、別の約束です。保証が何をカバーするのかを確認しましょう。部品だけか、部品、作業費、出張費まで含むのか。電話、リモート、現地でそれぞれどのくらいの速さで対応するのか。リモートサポートにはセルへのリモートアクセスが必要なのか。
そのうえで、保証の先にも目を向けます。価格付きの推奨スペアパーツリスト、保証後のサービス契約の価格、ソフトウェアの更新です。高額だったり遅かったりするサービスは、毎年支払うコストになります。
自社チームがどこまで引き受けるかも決めておきましょう。McKinseyの2022年の調査では、産業企業の52%が、システムインテグレーターが責任を段階的に社内チームへ移していくモデルを望んでいました。それが御社の計画なら、それを可能にするトレーニングと文書にも価格を付けてもらいましょう。
購入、リース、従量課金
同じ調査では、回答者の71%がロボットの設備投資コストを障壁に挙げています。購入のほかに、サプライヤーやファイナンスのパートナーはリースと従量課金も提供しています。
- 購入。 価格をマイルストーンごとに支払い、設備を所有します。セルを長年使うなら総コストは最も低くなりますが、初期の資金負担は最も大きくなります。
- リース。 銀行やリース会社がサプライヤーに支払い、御社は一定期間にわたって月額を支払います。技術的な範囲はそのままで、資金負担を分散できます。
- 従量課金(Robots as a Service、RaaSと呼ばれることが多い)。 月額料金、またはピック数やパレット数あたりの料金で、通常はサービスも含まれます。導入コストは低くなりますが、最低契約期間、数量の確約、データの所有者、契約満了時の扱いを確認しましょう。カスタムのラインよりも標準的なアプリケーションに向いています。
リースなら設備が貸借対照表に載らないと思い込まないでください。2019年から適用されているIFRS 16では、借り手は12か月を超えるリースについて、少額資産である場合を除き、使用権資産とリース負債を計上します。月額料金と購入価格を比較する前に、御社の会計基準でそれぞれの選択肢がどう扱われるかを財務チームに確認しましょう。
DBR77 Marketplaceの活用
DBR77 Marketplaceでは、どの提案も納期、保証、支払条件、据付、トレーニング、サポートを同じ項目に記載するため、財務部門は全入札者の取引条件を価格と並べて確認できます。合意した条件は、選んだサプライヤーと直接結ぶ契約に盛り込みます。支払マイルストーンの書き込み方は自動化の契約に署名する前に確認すべきことを参考にしてください。


よくある質問
自動化プロジェクトの公正な支払スケジュールとはどのようなものですか?
唯一のルールはありません。公正なスケジュールでは、設計と長納期部品の費用を早めに支払い、最も大きな支払いをFATとSATに結び付け、セルが生産で稼働するまで少額を残しておきます。前払金が大きい場合は前払金保証を求めましょう。
リースやRaaSは購入より安いですか?
セルの耐用期間全体で見ると、通常は安くなりません。ファイナンスのパートナーとサービスの費用が料金に含まれているからです。それでも、資金に余裕がない場合、数量が不確かな場合、サービスを一括で含めたい場合には、より良い選択になりえます。契約期間中の支払総額と、購入価格に自社のサービスコストを加えた額を比較しましょう。
条件が劣っていても、最も安い提案を選ぶべきですか?
その差を金額で評価してから判断しましょう。短い保証、日当で請求される立ち上げ日数、遅いサービスなどです。
まとめ
上の要素の表を依頼と一緒に各サプライヤーに送り、すべての行を埋めてもらいましょう。そのうえで提案ごとに、SAT前にサプライヤーがいくら受け取っているか、保証がいつ始まるか、立ち上げ日数がどう請求されるかを書き出し、合計額の低い提案を選ぶ前に、それぞれの差を金額で評価します。
合計額の裏にある取引全体を比較する
DBR77 MarketplaceにTechnology Challenge(技術課題の公募)を掲載して範囲、条件、コストを含む提案を1つのフォーマットで受け取るか、比較の進め方について当社チームにご相談ください。
出典
- McKinsey & Company, Unlocking the industrial potential of robotics and automation, 2023年(調査は2022年8月に実施)
- International Chamber of Commerce, Incoterms rules, 2020年
- IFRS Foundation, IFRS 16 Leases, 2016年(2019年適用開始)